中文熟考

中日翻訳者が綴る日々の記録

台湾プロ野球の球場紹介 その③ 新竹棒球場

毎年のことながら台湾は12月に入っても年末という雰囲気がまったくありません。 街に出ればクリスマスツリーはたくさん見かけるのですが、 何か決定的に日本の師走と空気が違います。 街の雰囲気というのは、人の気持ちでできているんですねぇ。

10年くらい前は野球のシーズンを振り返りながら部屋を掃除して、 年越しの準備を整えて、自分のことのように緊張しながらM-1グランプリを見たものです。 BTTFのBGMがもはや懐メロに聞こえたのは、私だけではないはず。 今年も伊集院光のラジオを毎週聞いていた私にとっては、 これが安藤なつちゃんか、という感慨も大きい5年ぶりのM-1でした。

また前置きが長くなってしまいましたが。。

今回はビーフンがおいしいことで有名な新竹の新竹棒球場をご紹介します。

正式な名称は「新竹市中正棒球場」。中正というのは中正紀念堂でおなじみ、蒋介石のことです。台湾のウィキペディアによると、1974年に施工をスタートし、1976年に完成。もともとは「王貞治棒球場」となる予定だったのが、建設中に蒋介石がなくなったので、「中正棒球場」に変更されたとのこと。ちなみに王さんが世界新記録となる756本塁打を記録するのは1977年。当時台湾でも王さんの活躍がさかんに報道されていて、台湾人の多くが長嶋茂雄は知らなくても王貞治は知っている、という状況だったそうです。
台北駅から台湾鉄道で1時間10分。新竹駅から徒歩20分で球場です。タクシーなら5分かかりません。住宅と商店のひしめく街のど真ん中に建てられているので、アクセスは至極便利。
中に入ってみると街とのあまりの近さにビックリ。遠近がおかしくなっているのではなく、電光掲示板のすぐ横にビルがあるのです。
こちら内野自由席。すぐ後ろに住宅。
住宅にクローズアップするとこんな感じ。硬球使ったプロの打球が飛んでくるにはあまりに近すぎる、恐怖のベランダ。
トタン屋根がバッキバキに割れているのは、打球が命中したせいでしょうか。

ビックリポイントばかりあげてしまいましたが、ネット裏の指定席はゆったりした造りの椅子が整備されています。また内野いっぱいにネットを貼っているのも特徴。2014年に客席とグラウンドを全面改修して、2015年にはプロ野球の試合も5試合開催されました(いずれも兄弟エレファンツ主催)。

この日は大專盃預賽の輔仁大學VS北市大學戦を観戦。映画「KANO」でアキラ(吳明捷)を演じた曹佑寧くんは輔仁大學野球部員なので、アジアウインターリーグに大学の大会に大忙し。この日は大学野球の強豪である輔仁大學のワンサイドゲームで、曹くんも4打数2安打(1打席は頭部への死球)の活躍でした。

ビーフンというのは強い風を利用して作るとコシのあるおいしいものができあがるそうですが、ビーフンをおいしくする強風が野球にとっては「魔の風」となることもあるようです。

台湾はプロ野球会場でも選手と間近で触れ合えるのが魅力ですが、学生野球はお客さんの数も少なくて、応援団もいないので、選手の話し声まで聞こえてきました。映画「KANO」では試合中にベンチで歌うことが物語の大きなポイントになっていましたが、先制した直後に輔仁大學のベンチから歌が聞こえてきた時はちょっと感動。台湾のチームは試合中、本当に歌って士気を高めるんですね。

球場周辺は商店街なので、食事の調達には不自由しません。有名な新竹都城隍廟へは球場から歩いて15分。お寺の敷地内に名産のビーフンや肉団子スープを出す屋台が軒を連ねているので、観光とグルメを一度に楽しめます。ビーフンも肉団子もさすがのおいしさ。

また2016年のプロ野球日程が出たらアップしますが、新竹で開催されることがあれば、ぜひ行ってみてください。