中文熟考

中日翻訳者が綴る日々の記録

テレビはどうなるんでしょうね。川口浩探検隊の本を読んで思ったこと

年末年始も仕事に明け暮れていたら、もう春の足音が。

2024年は年明けから落ち着かない日々が続きますね。

さて、最近読んだ本が面白かったので久しぶりにブログを書きます。

 

ヤラセと情熱 水曜スペシャル川口浩探検隊』の真実 プチ鹿島

本の話をする前に、もともと視聴時間の減っていたテレビだけれど、

全盛期を知る昭和生まれとしては、完全に見捨てるのも忍びなく。

かといって昨今の騒動過多で、久しく地上派ボタンを触ってません。

ちゃんと録画を見るのも「私のバカせまい史」だけとなり、さすがにNHK受信料への抵抗が止まらない。

 

あらすじ

テレビ全盛期に人気を博した「川口浩探険隊」。双頭の蛇や原始人間など未知の生物を探して秘境を旅する探検隊は、少年を中心に一大ブームを巻き起こすが、時代の変化とともにヤラセの代名詞となっていく。著者は当時番組に携わったスタッフを訪ね歩き、「どこまでがヤラセだったのか」「どんなスタンスで制作していたのか」という質問をぶつけながら、昭和のテレビ史を遡る。ヤラセとは何か、ドキュメンタリーとエンタメの境とは、テレビとはいったい何なのかという幻の答えを追いかける探検の物語。

 

感想

テレビっていうのはその昔、川口浩含め、超ボンボン、超エリートたちの真剣なお遊びで、視聴者は手のひらの上で転がされてたんだろうな、というのが読後の素直な感想です。ヤラセに罪悪感を感じている人とそうじゃない人の違いは何なのだろうと考えたけど、単純に誠実さの違いであり、裏返せば器の大きさというか、肝のすわり方の違いなのかもしれない。

不思議なもので探検隊員たちの話は、聞けば聞くほど純粋で、美しく、青春の香りがします。昭和の名プロデューサーが番組に抱く思いも、彼が思い描く「面白い絵」を愚直に追い求めていくスタッフたちも、タイトルにある通り“情熱”に突き動かされていた、としか説明できない。情熱があればウソをついてもいいかどうか?そもそも編集した映像で「真実を伝える」ってスタンスが大風呂敷広げすぎなんでしょうね。

 

「私のバカせまい史」もそうだけど、過去の番組を遡って、こんなことしてたとか、あんなメチャクチャだったとか、芸人さんたちが過去に切れ味鋭く突っ込みつつ、「なんだかんだいい時代だったねぇ」と目を細めて見られるコンテンツが、テレビに関しては今一番面白い気がしています(そういえば「神回だけ見せます」も好き)。まあ私が歳取ったせいでしょう。いろんな意味で、諸行無常に思いを馳せざるを得ないこの頃です。