佐々木朗希選手のパーフェクトゲームには本当に驚きました。
それを伊集院さんが現地観戦していて、ラジオで喋ってくれたのも嬉しかったです。
回が進むにつれてビールが売れなくなっていくスタンドの臨場感とか、
捕手の松川選手が卒業証書の筒を弄んでた話で笑いながら感じる年齢のリアルさとか、
すごい瞬間をすごい話術で聞けて、ゾクゾクしました。
登板回避事件の是非が問えるものでは…
佐々木投手といえば、甲子園地方大会での「登板回避事件」が有名です。
私は当時、自分が公立高校の教員でもある野球部監督だったら、
投げさせてしまうかもと思いました。
ものすごい才能を預かったばかりに起きた悲劇。
その才能を守るために、監督は苦渋の決断で連投を避け、
結果として、チームは甲子園に行けませんでした。
賛否両論が飛び交い、張本さんとダルビッシュ有選手がメディアとSNSで
大激突したことでも有名ですよね。
あの事件から3年。千葉ロッテマリーンズでも吉井投手コーチに
大切に大切に育てられ、満を持してのローテ入り直後のパーフェクトゲーム達成で、
「あの時の國保監督の決断が正しかった!」と言っている人も多いですね。
わかります。すごいすごいとは聞いていたが、本当だったんだ!と思ったんですよね。
あの時つぶさなくてよかったじゃん!と思う気持ちはわかります。
でも個人的には、決断が正しかったということではないかなと思います。
甲子園歴史館で感じる大会の重み
先日ダウンタウンを見るために関西に行った時、
阪神甲子園球場にも行ってきました。
歴史館はこのエントランスがある建物と、甲子園球場の一部という2か所にまたがっていて、
前者は阪神タイガースの歴史、後半は高校野球の歴史をテーマにした展示になっています。
私が一番興奮したのは台湾から甲子園に出場した嘉義農林高校のブースができていたことです。
案内表示があるコーナー以外はインターネット上での公開禁止ということだったので、
残念ながら写真は掲載できませんが、公開OKのボールウォールにもちゃんと名前がありました。
2015年に公開された「KANO~海の向こうの甲子園」で知った方も多いと思います。
私も当時は台湾にいたので、出演者の方へのインタビューなどで関わらせていただきました。
詳しくはぜひ映画を見ていただきたいんですが、
監督が遺恨を残す「甲子園」という大会が、「甲子園」という場所が、
人種混成チームの絆となって、選手の人格形成に重要な役割を果たします。
この嘉義農林チームのエースである呉明捷投手は、全試合を1人で投げ抜きます。
爪の皮が剥がれて、ユニフォームが血で染まっても、投げ続けます。
そして甲子園の決勝戦まで監督とチームを連れて行きます。
それから3年後、呉投手はマウンドを降りて、野手に転向するのです。
甲子園での連投が原因なのか、今となってはわかりません。
ひとつ確かなことは、甲子園準優勝という結果が90年の歳月を経て、台湾の球史に燦然と輝いているということです。
人生は続くよ、甲子園の後も
佐々木投手自身は、登板回避事件についてほとんど喋っていません。
破れた地方大会決勝の後に、報道陣に聞かれて
「監督の判断なので」「投げたかったです」と絞り出しただけ。
プロに入る前も入ってからも、何も言っていません。
自分の判断ではないのだから、語りようがなかったのでしょうか。
あの事件に限らずあまり多くを語らない印象のある佐々木選手が、
すごく印象的な言葉を残していましたので、一行だけ引用させていただきます。
「自分の将来というか、未来に懸けたということなんです」
ロッテでも大切に育成されて、一年目は一軍に帯同しながら登板機会がなかった。
あれだけ注目されてプロ入りしたのに焦りはないのか、と聞かれてこう答えていました。
この言葉からわかるのは、佐々木投手本人は自分の可能性を信じて、ずっと前を向いていたということです。
未来を正解にできるかどうか
佐々木投手はそう遠くない未来にメジャーリーグへ行くと思いますが、
メジャーリーグで大成功した野茂英雄さんも、物議を醸した才能の1人でした。
監督と揉め、球団と揉め、契約書の盲点をついた賛否両論のメジャー入り。
いや、当時は賛否両論ではなかった。否ばっかりでした。
それがいざメジャーの舞台で活躍すると、手のひら返しで称賛され、
日本人メジャーリーガーのパイオニアと崇められて現在に至ります。
この一件からわかるのは、何が正しかったか、本当は答えなんかなくて、
正解があるとすれば、自分で作るしかないんだということです。
佐々木投手が言っていた「未来の自分」というのは、きっともっと遠くにいるんでしょうね。
あれだけの才能がまだ伸びていくのを、リアルタイムで見られる我々は幸せです。
先行き不安でも、未来を信じて、正解にしていくことはできる。また野球選手に大事なことを教えてもらいました。