2020年の金馬奨(中華圏最大の映画祭)で5部門に輝いたという台湾映画『1秒先の彼女(消失的情人節)』がアマプラで見られるようになっていたので鑑賞。岡田将生さん主演でリメイクされた日本版にあわせて、おすすめに上がってきたらしい。ちなみにリメイク版には『青春18×2』の清原果耶さんも出演されています。
台湾映画はホラーとか教育虐待っぽい話とか、ちょっと暗いテーマのものが話題になることが多くて、そんな中キービジュルアルからしてかわいいこの作品は気になっていました。
あらすじ
郵便局で働く30歳の楊曉淇(ヤン・シャオチー)は、ある日ダンスインストラクターの劉文森(リウ・ウェンシェン)と出会い、一緒にバレンタインデーのイベントに参加することになる。恋人と過ごすバレンタインを前に浮かれる曉淇だったが、当日バスに乗ってイベント会場に向かっていたはずが、自宅のベッドで目覚めて呆然とする。どうやらすでにバレンタインデーは終わっているらしく、なぜか全身日焼けしている曉淇。楽しみにしていたバレンタインデーがなぜ消えてしまったのか。戸惑う曉淇は一枚の写真から、意外な真相にたどり着く。
感想
「バレンタインがなくなった」と警察に飛び込む冒頭から、「何をやるにも人より早い」という曉淇のペースでストーリーが進んでいくので、「いったい何が起きたの?」というミステリへの興味とともに、どんどん物語に引き込まれました。
前半のめまぐるしい展開から、後半はもう一人の主役、「何をやるにも人より遅い」という阿泰のゆったりした時間の流れに切り替わり、ロードムービーのように「空白の1日」を追体験していきます。この辺の緩急は実に心地よかったです。
せっかちな曉淇とのんびり屋の阿泰が、周回遅れのように出会うラストシーンもなかなかグッときましたし、テーマである“時間”についても考えさせられる作品となりました。
“時短”という言葉もあるように、「人より早い」曉淇のほうが時間を節約していると思っていたのですが、「人より遅い」阿泰のほうが時間を“貯蓄”できていたというのが、曉淇タイプの私にとってなかなか興味深かったです。
辛い過去を持ちながら、一瞬一瞬を大切にカメラに収めていく阿泰の姿から、ゆっくりと生きている人の強さをすごく感じました。先を見て時短するのもタイパを考えて生きるのも間違いではないと思うけど、結局は一歩一歩進んできた道しか「人生」と呼べるものはないんですよね。今その瞬間を全力で過ごすことが、本当の意味で時間を大切にすることになるんだな、と気づかされました。
いろんな意味で「自分を大切にしよう」と思える映画なんじゃないかと思います。