中文熟考

中日翻訳者が綴る日々の記録

足るを知ることが、幸せのはじまり。

日本に帰国して以来の金欠であえいでいる。

夫の住民票は台湾にあるので、世帯主は私ということになる。

世帯主の収入源がアルバイトと単発のフリー仕事となり、

つまり一切福利厚生の恩恵にあずかれないので、

健康保険から年金、市民・県民税の支払いが一気にのしかかってきた。

扶養に入らずフリーランスとなると、自由の代償が大きいのです。

字幕翻訳ソフトのチケット代、NHK受信料1年分、

小六になった子供のスマホ代と、重なるときは重なるものである。

まぁこういう時は予備費から補填するしかないのだが、

それにしても出費が多すぎて、もうこれ以上一切無駄なお金を使いたくない。

どうすれば冷蔵庫が片付くのか、やっとわかった。

金欠になってよいこともあった。冷蔵庫が本当に空になったのだ。

日頃から慎ましく暮らしているつもりだったが、

やはりいつのまにか無駄を垂れ流しているものである。

節約にはつくり置き、とか冷凍保存、とか言うけれど、我が家には向かない。

冷えたつくり置きおかずは食べ盛りの男子に不評だし、

冷凍保存したまま忘れ去られ、冷凍焼けして使えなくなった食材も多々ある。

根がズボラで頭もそれほど良くないので、冷蔵庫も冷凍庫もすぐ散らかる。

どうすれば片付くのか…長年の悩みが解決した。あまり入れなければいいのだ。

少ししか入っていなければ、見失いようがないし、それを使うしかない。

こんな簡単なことに気づくのに10年かかった。

貧乏生活ってクリエイティブ。

少量の鶏ひき肉が30%オフになっていたので、買って冷凍しておく。

冷凍庫の端にあるそれを見失い、また肉を買うという恐ろしい悪循環。

見失いようもなければ肉を買い足す余裕もないので、

小さく凍った鶏ひき肉を引っ張り出し、豆腐と余った野菜を混ぜて焼き、

甘辛いたれをかけて出したら、息子がバクバク食いついた。

私はといえば、鶏ひき肉の横でガチガチの板と化していた油揚げを

トースターで焼いて、ネギと醤油をかけてつまみつつ、

一昨年作った梅酒の残りをお湯で割って飲んだりしている。

こうなると残った食材を使っていかに食卓を潤すかというゲーム感覚だ。

6月某日、息子から「最近ご飯がうまい」と言われる。完全に勝った。

ダメ主婦開眼。知足常楽に一歩近づく。

デキる主婦の皆様はこんなこととっくにやっていて、

日頃から食費を抑えて食材も無駄にしないのでしょうが、

面倒くさがりでズボラな私には、どうにも真似できない気がしていた。

そもそも私は料理する時間があったら、本を読んでいたいのである。

台湾での主婦時代も大学生のように書籍代を惜しまず、

日本から取り寄せたりして、家計と空間を圧迫していた。

永遠の文学少女ぶりを夫にもなじられていたのだが、

帰国してからは図書館通いも習慣になり、少しずつ暮らしが軽やかになってきた。

でも料理は頭を使うし、時間がかかる。そのエネルギーを別のことに使いたかった。

……そんなダメ主婦がいろいろな支払いに追われた結果、

いよいよ追い込まれて開眼しました。食費がいくら減るか楽しみだ。

この感覚を忘れずにやっていこうと財布の紐を締め、

「足るを知る」を肝に銘じてブログタイトルも変えた6月です。

知足常楽…足るを知るは常に楽し。