中文熟考

中日翻訳者が綴る日々の記録

翻訳は斜陽産業なのか

これからの子供たちは、AIに負けない力をつけるべきだとか、

近い将来いろんな仕事がAIに取られるというけれど、

果たして本当にそうなのでしょうか。


字幕翻訳は機械化が進んでいるが…

すでにスマホでパシャリと撮影すれば、ハングルだろうがロシア語だろうが、

記号にしか見えない言葉たちもそれなりに訳してくれるし、

字幕翻訳でも配信動画などは機械字幕と思しき字幕も使われています。

ひどい日本語に辟易しつつも、最低限の意味は取れるので、

わざわざギャラを払って翻訳家を雇う意味がなくなってくるかもしれません。

そもそも文庫本の代わりに映画やドラマを持ち歩く時代、

小さな画面で字幕なんて読んでられるか、という若者の声が聞こえてきそう。

演技力抜群の声優さんも増えたし、字幕翻訳はホントにヤバいかもしれない。


それでも言葉の力を信じたい

その一方で。電車とかで何気なく聞く会話から、ふーんと思うことがあります。

「テレビから今日の占いが流れてきて、人に頼っちゃダメと書いてあって、

ちょうど抱えてる仕事頑張ろうかなと思ったんだよね」

Amazonでショッピングしてたら、おすすめ本に在宅ひとり死のススメって

タイトルが流れてきて、一人暮らしで在宅してる身に刺さりすぎ」

なるほど。人って何気なく目にした短い言葉に

背中押されたり、考えさせられたりしてるんだな…と。

みんな無意識のうちに、自分に必要な言葉を探しているのかもしれません。

AIは“伝達としての言葉”は伝えられるかもしれないけど、

“心に刺さる言葉“は人と人の間に生まれるものだと思いたいです。

実はそれが、翻訳をやりたいと思った根っこの部分だったりします。